2024年度 理事長 所信

2024年度 理事長
藤原 寛史

【はじめに】
 私たち一般社団法人須坂青年会議所(以下「須坂JC」といいます。)は、昨年に創立55周年の節目を迎え、未来ビジョンとして「明日に架ける橋」を掲げました。この地域で生きる青年としての情熱をもって、地域の課題解決に先駆けて取り組むとともに、人と人とをつなぎ、応援し、協力しあうことで、子どもたちの明るい未来と郷土愛があふれるあたたかい地域をつくる架け橋となる活動を行うことを宣言しました。
 行動指針は次のとおりです。

〈1〉須高地域の未来を担う人財となるために
   地域課題に真剣に向き合う場として仲間を増やし、
   自己成長を得る登竜門となる。
   人と人をつなぎ、郷土愛を育む機会をつくり、未来の地域の担い手を育成する。

〈2〉子どもたちが誇れるまちであるために
   市民・企業・行政・教育機関とともに、
   子どもたちが安心して成長できるまちを創る。
   地域資源を活かし、地域内外の双方に地域の魅力を発信する。

〈3〉郷土への想いを大切にする
   地域の絆を結び、尊重しあい、協力しあい、互いを高めあう。
   須高地域らしさ、人を想うあたたかさを大切に、声を発信し続ける。

本年はこの未来ビジョンを具現化するためのスタートを切る大事な1年となります。

【須高地域の魅力の再発信】
 私は13年前に神奈川県から須坂市に移住してきました。外から来ると気づく須高地域の魅力に、地元の方々は気づいていないと各所で感じます。季節ごとにその顔を変える美しい山の景色、歴史を感じる蔵の街並み、美味しいフルーツの数々や山の幸、絶景の峰の原高原や五味池破風高原、米子の滝等の景勝地、気軽に立ち寄れる各地の温泉など挙げればきりがありません。風光明媚な土地でありながら、長野電鉄が走る須坂駅を中心に、多くのスーパー、病院、飲食店等があり、充実した日常生活を送れます。同じく活動圏域である小布施町も栗や葛飾北斎、街並みを活かしたまちづくりで全国的な観光地となっており、山田温泉を含む8箇所の温泉や山田牧場を擁する高山村もその景観が大変美しい地域です。このようにそれぞれに特色と魅力があり、誰もが誇りに思って然るべき場所であるにもかかわらず何もないと語る地元の方々がいました。
 もっとも、この須高地域も全国的な課題である人口減少や少子高齢化の課題は避けて通れません。これと正面から向き合うには、須高地域を誇りに思う人が一人でも増え、この地域のファンを増やすほかにありません。そのファンの母数が移住者の数につながり、地域の活性化につながります。この地域に住むすべての人に誇りに思って欲しい、そのために私たちは青年の目線から見た須高地域の魅力を多くの人に再発信する取組みを行います。

【子育て支援】
 人口減少、少子高齢化は須高地域においても深刻であり、国においてもこの流れを止める手立ては見つけられていません。結婚タイミングの晩婚化や未婚率の上昇など結婚や出産に関する価値観が多様化したこと、仕事と子育てを両立できる環境整備が不十分なため、出産後の就労継続やキャリア形成に対する不安があることなどがその原因とされています。結婚や出産に関する価値観が多様化したことは素晴らしいことであり、尊重されるべきものです。その一方で、子どもを産み育てたいと思う方が諦める社会であってはなりません。
 そのために私たちは子育て世代が住みたいと思える街づくりに取り組みます。具体的には行政への政策提言や、行政の政策に子育て世代の当事者として意見を伝える役割を果たし、行政と手を取り合って子育て支援政策を推進します。
 私には4歳と0歳の2人の子どもがいます。妻と共に須坂に移住してきたことから近くに実家はなく、気軽に頼ることはできません。妻も働いており、いわゆる共働きです。子育て世代のど真ん中だからこそ気づくことのできる地域課題に取り組みます。
 加えて、私たち自身も日本青年会議所の推進する「育LOM」推進プロジェクトに基づいて、育児世代であるJCメンバーが家庭や仕事、JC活動を並行しながらも活躍できる子育て支援等を積極的に行うJCとなり、日本青年会議所より育LOM認定を受けることを目指します。また、日本青年会議所は「子どもを生み育てたい社会」を作ることを目的に、企業や行政等と連携し、ベビーファースト運動を展開しています。昨年度、須坂市においても同運動への参画表明及び活動宣言をしていただきました。今年度は小布施町や高山村においても同表明及び宣言をしていただくことを目指します。
 子育て世代が住みたいと思えるまちとは何か、子育て世代が求めるものは何か、そして私たちができることは何か、常にこの問いかけを意識しながら、楽しく生き生きと親と子が暮らせる須高地域にすることを目指します。

【地域の課題解決を行うという理念共感型の会員拡大】
 各地の青年会議所において会員が大幅に減少しており、須坂JCも例外ではありません。加えて須坂JCでは35歳以上のメンバーが多数を占めており、団体としての消滅の危機が迫っています。
 かくいう私も、何年もの間、須坂JCや他のJCの加入の勧誘を断っていました。いま振り返れば夜の酒場で騒いでいるイメージが強く、青年の力で「地域課題を発見して解決し、持続可能な地域を創る」という青年会議所の本質的な理念を理解していなかったからだと思います。この立場になったからこそ、あえて指摘を申し上げれば、そのとき私が受けた勧誘は「成長の機会」「人脈を広げることができる」に特化した印象をもちました。もちろんこれを否定するものではありません。しかし、当時の私は毎日のように弁護士業務にかかる新規の依頼があり、到底処理しきれないことから依頼を断らざるを得ない状況でした。そのため、人脈を広げることに興味を抱きませんでした。また日々の弁護士業務に懸命に取り組み、専門職として法律に関わる見識を広げ、面談でのヒアリング能力や、交渉力、加えて訴訟活動の質を研鑽することが、何よりも自身の成長と考えており、青年会議所の一員となることが成長の機会となることについてピンとはきませんでした。
 現実問題として、今年は13名でスタートする須坂JCに「人脈を広げること」を目的として入会するメリットが大きいとは言えません。人数の多い他のJCに入会するほうがよりその目的を果たすことができます。また青年会議所の活動が「成長の機会」につながることは間違いなく、今の私は理解しています。もちろんこれを伝えていくことは重要ですが、それぞれの分野で仕事に邁進し、活躍されている青年に入会前に「成長したいから入会したい」とイメージしてもらうことは困難ではないでしょうか。
 その後、私はコロナ禍に見舞われる社会の中で、須坂JCの「街ぶらすざか」という事業に触れました。須坂JCのメンバーで補助金を得て、須坂市とも協力し、外出自粛などの影響で苦しい営業が続く地元のお店を支えるべくプレミアム商品券「ザカス札」を発行する活動に正直驚きました。須坂JCのメンバーが真に地域を想い、地域の課題解決に取り組む姿に心を打たれました。また、「須坂の大人と仕事を知る冊子SUZAKA-ZINE」では、須坂で働いている大人と仕事の魅力を中学生らに伝える活動に触れました。若者の人口流出に問題意識をもち、須坂で働く魅力を伝える活動はまさに地域の課題解決に取り組み、持続可能な地域を創ろうとするものでした。
 そして何より須坂JCのメンバーはみな笑顔に溢れて活動しており、雰囲気が温かく、年齢の差はあれど、互いに信頼し合って活動していました
須坂に移住して13年が経過し、この地を好きになり、この地でこれからも生きていきたい、そして子どもにも須坂が地元で良かったと思ってもらいたいと考えている自分にとって、青年の力で「地域課題を発見して解決し、持続可能な地域を創る」という青年会議所の本質的な理念に触れ、これに共感したとき入会する以外の選択肢はありませんでした。
 いずれの組織、企業等においても、その組織の理念を知り共感したとき、入りたいと思うのではないでしょうか。私の過去の経験からしても、須坂JCに入ることのメリットを打ち出すのではなく、本質的に何をする組織なのかを一人でも多くの方に知ってもらい、共感してもらう人を増やすべきだと思います。「地域課題を発見して解決し、持続可能な地域を創る」、その理念は自身やその家族が住み続ける地域をよりよくしたい、と思っている多くの青年に響くものと信じ、その理念に基づき活動する青年の火を絶やさぬよう今年度は会員拡大を重要課題として取り組みます。

【持続可能な組織になるために】
 一方で足元に立ち返り組織を見ると、会員数減少による各人の負担が増加している現状があります。各事業で一部の会員への属人化の問題(任せきり、その人がいないとわからない、負担が重く任せている結果進んでいないなど)が発生しています。能力溢れるメンバーであっても、一人が様々な業務を抱え、属人化すれば負担に感じ、やらされていると感じ、何のためにこの活動をしているのかという理念に立ち返る余裕もなく、須坂JCになぜ入っているのかわからなくなれば、辛いばかりで楽しくありません。その一方で、せっかくメンバーになったにもかかわらず、組織を誰がどう動かしているのか、わからない人もいます。これでは須坂JCの一員であるという主体者意識が生まれることはなく、メンバーとして在籍しているだけで参画を得ることができません。
 このような組織の状態では、理念に共感した会員が加入したとしても、理念を実現する組織には程遠く、その会員を裏切ってしまうことになります。
そのために、本年度はそれぞれの会員が責任と権限をもって活躍できる「仕組み」づくりに取り組みます。これは「任せる」ことと同義ではありません。「仕組み」づくりを明確に行うことで、誰が何をするか、しているかが可視化され、属人化の解消につながる一方、それぞれが与えられた役割の中で輝くことができる組織を目指します。一人ひとりが主役となり、主体者として活躍し、地域の課題解決に取り組みながら成長できる「仕組み」を作るのが理事長としての責任であると考えています。
 そのうえで、家族や仕事があっての須坂JCの活動である、ことを宣言するとともに、単に宣言するだけでなくこれを具現化した活動にしていきます。JC活動に代わりはいます。でも家族に代わりはいません。仕事に向き合うことができず収入がなければ、到底地域の課題解決のための活動をすることはできません。
 諸先輩方が明るい豊かな社会の実現のために情熱をそそぎ脈々と築き上げてきた歴史と伝統に敬意を表したうえで、持続可能な組織たるべく、時代や社会情勢に応じて、須坂JCも柔軟に変化していかなければなりません。これまでと同じ須坂JCの活動方式では、核家族化、女性の社会進出による共働き世代の増加、男性が育児に積極的に取り組むことが当たり前となっている時代の変化に対応できていないというのが率直な思いです。
 そのために今所属している、そしてこれから加入してくるメンバーにとっての正解を模索しながら、理事長としての職務に邁進するとともに、全員にとって最重要は家族であり仕事である、という優先順位を忘れることなく、互いにメンバーの活動を支え合いたいと考えています。
 また、この「仕組み」づくりは、ひいては会員拡大にもつながると考えています。メンバーが仕事や家族を大切にしながら地域をよりよくするために課題と向き合い貢献すること、その活動の中で同年代の地域を思うメンバーと深くつながることができること、そして、その過程が自己の成長につながると実感できてこそ、はじめて須坂JCの一員になりたいと思う方が一人でも多く増えると信じているからです。

【須坂JCの認知度の向上とファン作り】
 私たちは地域の課題解決に取り組む様々な活動を行っています。しかしながら、須坂青年会議所がどのような組織で、どのような理念をもって活動しているか、住民の方々に知られていないのが現状です。加えて、昨今は様々な青年団体が存在し、それぞれ地域を盛り上げるイベントを開催するなどの活動を行っており、須坂JCが埋没してしまっています。しかし、地域を想い、地域の未来のために課題を発見して掘り下げて、青年が自ら予算を拠出して、その解決に取り組む多種多様な事業を行う団体は青年会議所の他には見当たりません。SNS等情報発信の手段が多様化している今、これを利用しない手はありません。2023年12月現在、Facebookは623人、X(旧Twitter)は634人、Instagramは663人のフォロワーを抱えながら、これを利用して、須坂JCが何を目的にして、いかなる活動をしているか、十分に伝えることができませんでした。
 そこで今年度はSNSを積極的に利用して須坂JCの活動報告を定期的に行い、また、メンバー紹介を行うことで、地域のどのような青年がいかなる思いをもって活動しているか伝えることで、須坂JCの認知度を高めるとともにそのファンを必ず増やします。

【結びに】
 私は26歳のころに須坂市に住み始めました。思い返せば仕事に手いっぱいで須高地域の魅力を知らないまま、いつ神奈川に帰ろうかと考えていたときもありました。しかし、多くの人に支えられ、業務を続けてくることができて今があり、その過程で知れば知るほど須高地域を好きになりました。今は須坂市内に家を建て、妻や子どもと穏やかで幸せな日々を過ごしています。仕事面においてもやりがいを感じる毎日です。この生活があるのは諸先輩方が地域社会の発展のため多大なるご尽力をされた結果、須高地域が魅力的かつ活気あふれる場所として在り続けているからであり、これを次世代に向けて繋ぐ責務を感じています。
 私の「地元」は神奈川県ですが、私が住む「地域」はこの須高地域です。本年度はこの「地域」の明日に橋を架けるため須坂JCのメンバー全員が一丸となって取り組んで参ります。

【基本方針】
 明日に架ける橋

【2024年度スローガン】
ひとり一人みんなが主役~みんなで住みたいまちをつくろう~

【重点活動項目】
総務委員会所管
・不必要な慣例を無くした適切かつ効率的な組織運営
・財務の透明化及び健全性の確保
・須坂JCの認知度の向上及びファンづくりのためのSNS発信

地域の魅力再発信委員会所管
・須高地域の魅力を再発信する事業の実施
・子育て世代を支え応援する子育て支援事業
・地域の課題解決を行うという理念共感型の会員拡大の推進
・持続的なカッタカタ祭りの運営支援