2022年度 理事長 所信

2022年度 理事長

宮澤智史

はじめに
わたしたち一般社団法人須坂青年会議所(以下、「須坂JC」といいます。)の活動圏域である須坂市・小布施町・高山村は、県の北部、善光寺平の東部に位置しています。東京から新幹線と長野電鉄で約2時間、それぞれに特色ある自然豊かな故郷です。須坂市はかつて製糸業で栄えた面影の残る蔵の街並み、果樹栽培の盛んなフルーツハリウッド、星空と雲海が絶景の峰の原高原、五味池破風高原、米子の滝等の景勝地を擁しています。高山村は、北信五岳や北アルプスの絶景を一望でき、開湯200年の歴史を持つ古湯山田温泉、信州のチロル山田牧場を擁しており、近年はワイナリーが次々とオープンしています。小布施町は、長野県で最も面積の小さい自治体ながら、葛飾北斎や栗、街並みを特徴とした歴史・自然を活かしたまちづくりをしている全国的な観光地です。
2019年秋台風19号により被災、復興も半ばの2020年より新型コロナウイルス感染拡大により従来の生活様式が一変、地方経済に大きな影響を与え、今なおこの禍のその向こうはクリアに見通すことはできません。その中において2024年、上信越自動車道須坂長野東I.Cの真横に、大型商業施設、観光交流施設、産業施設が全面完成を控えており、期待が大きい一方で、中心市街地への影響が良くも悪くも懸念されているところです。
このようなピンチとチャンスに溢れた変革の時代の起点として、「地域社会をより明るく豊かにしたい」「次世代にこのまちを繋いでいきたい」という我々の情熱が、持続可能な地域を創っていきます。我々の力も須高地域のポテンシャルもこんなもんじゃない。ここから一人ひとりが知恵を出し合いその向こうへ向かって行動を起こしていきましょう。

会員同士の連帯感を育む絆結び
本年の須坂JCは新入会員・準会員がほとんどであるため、青年会議所の理念や使命を共有していくところからのスタートとなります。よって、例年以上にセレモニーを大事に執り行い、綱領やミッション等の共通認識を持つことで連帯感のある組織を創っていきます。特に3分間スピーチは例年以上に多く実施したいと考えています。メンバーが自分の事を自分の言葉で伝え、自分を知ってもらい、それを聞くことによりお互いを知り、少しずつ仲間になっていくと思います。締めるところは締めていく一方で、個性豊かなメンバーがそれぞれの役割を担って、かつ、楽しみながら事業を構築していきたいと考えています。意見を言い合うこと、衝突すること、辛いことがあっても、それは繋げていくため、楽しむため、地域のため、その向こうへ事業を昇華させていくためという認識が共有されていることが重要です。点と点が結ばれて線になるように、一人ひとりが事業を創っていき、須坂JCに成っていく。その向こうに持続可能な豊かな地域が待っていると信じます。

会員拡大の推進とは
冒頭に須坂JCの活動圏域は須坂市・小布施町・高山村と書きましたが、現在のメンバーは圏域外のメンバーも多数在籍しています。青年会議所のミッションは「青年が積極的な変革を創造し開拓するために、能動的に活動できる機会を提供する」ことであり、地域、経営者・非経営者、会社の役職や性別、国籍、宗教などの区別は一切ありません。すべての青年が共に活動しうる仲間です。須高3市町村長をお招きした市民公開討論会「すざかいぎ」、コロナ禍における消毒液配布事業や地域振興券ザカス札の発行、キャリア教育冊子「SUZAKA ZINE 須坂人」などの活動も須坂JCの知名度を広く発信しており、こういった活動に共感いただいたメンバーも入会しました。この理由としてはメンバーが一体となり楽しく活動していること、それを対外的にも発信できたことが大きな要因であろうと考えています。つまり事業を外から見た際、事業を運営しているメンバーを見て、そこに共感が生まれ、仲間が増えていくということです。より質の高い意義のある事業を創り続け、楽しく和やかに活動をしている姿を見せること、それこそが会員拡大に最も近い道筋です。圏域に住まう青年の心を躍らせるような事業を実施し続けることが、結果として会員拡大につながると信じ、事業を創り上げていきます。

青少年の未来が地域を明るく照らすこと
子育て世代が暮らしやすい地域であること。子どもたちが希望を持ち、進路の選択肢を持ち、人生に夢を描けること。生まれ育った地域の魅力を知り、郷土に誇りが持てること。この3つの要素が子どもと地域の未来を明るくすると信じています。
結婚と子育ては次世代の形成と地域社会の活性化において大切な要素です。しかし全国的な状況と違わず須高地域においても、長年にわたる晩婚化・非婚化の進行は課題であり、少子化・過疎化といった地域の活力の低下をもたらしています。また、昨年来のコロナ禍において、他者との接触や交流についての制限は、結婚を望む若者にとって出会いの機会の減少にもつながっており、想定を遥かに上回って進む少子化に繋がっています。現在、日本青年会議所は「子供を生み育てたい社会」をつくることを目的に、企業や行政等と連携しベビーファースト運動を展開しています。子育てをするなら須高地域、となれるよう、親世代である私たちが声をあげてそんな地域を創っていく必要があります。子ども自身にとっても、生きやすい環境、多様性が認められる雰囲気、選べる教育環境が必要です。
また、これからの時代を見据えたときにより重要になっていくのが、子ども世代若者世代に対するお金の教育、マネーリテラシーの向上です。今の日本では社会に出た際、男女問わず若者が経済的に豊かであるとは決して言えません。非正規雇用、奨学金返済、低賃金が当たり前の社会だからです。終身雇用はかつての話であり、現代の日本は若者の生きづらさのうえになんとか成り立っているとも言えます。漫然と進学、就職をするのではなく、そこについてまわるお金のことをしっかり学び、お金との付き合い方について適切に判断する力、すなわちマネーリテラシーの向上を図っていくことで、若者が生活を自衛し、より良い人生設計を描け、明るい未来に繋がります。
そんな中、須坂市内の高校が100周年を迎えるにあたり、記念事業として、空き家を活用した事業を検討しています。また、中高生を中心に、学校においてSDGsについて学ぶ機会を積極的に設けています。我々青年会議所は「日本一のSDGs推進団体になる」との宣言を総会決議しており、子どもたちのSDGs教育に貢献できる形を模索することも大切です。空き家についてもSDGsについても、学生組織や教育機関等と協働することで、事業効果を相乗的に高めていき、地域の青少年の指標となる事業を構築してまいります。

地域を巻き込んだ地域課題解決
地域の現実として、人口減少、少子高齢化、空き家が増加している状況があります。行政も移住支援、新規就農支援に力を入れていますが、不動産の有効利用が大きな課題となっており、中心市街地空洞化、駅前のマンションの老朽化、旧ショッピングセンターのシャッター化が進み、市街地の衰退が進んでいます。買い物はネット通販や近隣の中核都市である長野市内へ。災害にも脆弱で、先の台風19号災害では千曲川の越水により須坂市小布施町の一部が被災し、まちの強靭化も課題となっています。産業に目を向けると、工業における新規企業は停滞し、コロナ禍も相まって観光入込客数は減少、さらに農家経営者は高齢化しており、その半数以上は後継者がいない状況です。須坂市の中心市街地には、スーパーや小売店等多様な施設が歩いて暮らせる範囲に集積していることから、中心市街地への定住促進が求められますが、市街地空き家所有者が物件を手放さない(売買・賃貸を拒む)など、不動産の活用を希望する若者とマッチングが進まないなどの構造的な課題を有しています。
このような地域課題の解決には、より多くの人や団体を巻き込み、共に課題の共有をし、解決に向けて取り組んでいくことが重要です。情報提供や表面的な協力だけではなく、須坂JCの想いを組織の枠の向こう側へ波及させていくこと、さらに他団体への事業にも我々が積極的に参加していくことが組織間の好循環を作ります。地域をより良くしようという同じ目標を持った活動を可能な限り多くの団体と共に行っていくことでより大きな事業・波及効果を生み出すことができます。それが私たちにも大きな学びと成長、出会いをもたらしてくれます。
持続可能な地域の課題として最たるものは人口減少であり、50年後には須高地域の人口が半分になるとも言われています。一方でコロナ禍において移住希望者は増え社会増の傾向があります。移住に際しても、若者がチャレンジをしていくに際しても「場所」が必要なのは言うまでもありません。須高地域に増え続け、地域活性化の阻害要因となっている空き家を、移住の受け皿、若者の生活の場、チャレンジの場に変えていきたい。空き家をポジティブに捉えれば地域の「伸びしろ」です。上手くマッチングし利活用されれば、地域は活性化していきます。この重要課題に、組織の枠を超えて、認識を共有していきたいと思います。

持続可能なLOM運営のために
定款をはじめとした諸規定は、須坂JCの根本的規則であり、かつ、それは時代とともに変化していくものだと思います。須坂JCという地域のために活動する組織が持続可能であるため、より活動しやすくするため、より入会しやすくするため、次世代=その向こうへ須坂JCを繋げていくため、定款および諸規定のバージョンアップを図ります。
また、須坂JCに対する地域のファンづくりが、持続可能なLOM運営のために必要です。現在、須坂JCでは、地域にある媒体を除けば、HP、Facebook、Twitter、Instagramにて情報発信をしています。2021年度現在、Facebookは400名以上、Twitterは500名以上、Instagramは400名以上のフォロワーを擁していますが、我々の情報発信はもちろんのこと、地域情報、そして地域の枠を超えた長野ブロック協議会や他LOMの活動への参加報告、地域社会にとって有益な情報等をシェアしていくことによって、須坂JCの認知度を高めてフォロワー、すなわち須坂JCファンを増やしていきます。
これはいずれも須坂JCのファンづくり・持続可能性は、須高地域のファンづくり・持続可能性に直結していると信じているからです。須坂JCの活動は地域に住まう若者の善意で成り立っており、メンバーたる当該若者は須高地域の未来を案じ、危機感を持ちつつも、地域のポテンシャルを信じているからこそ活動をしているのです。このポテンシャルを引き出せないことが悔しい、知ってもらえないことが悔しい。我々JCメンバーの子ども世代に、住みたい地域、たとえ一度離れたとしても帰ってきたくなる地域を残したい。次世代に繋げていく価値のある地域である。そう信じているからこそ、我々は地域のためにJC活動に真剣に取り組むことができるのだと思います。

結びに
何もしなくても、地域に無関心でも、選挙に行かなくても、地域社会は変わらないし、このまま続いていくものと考えていました。
高校を卒業して須高地域を10年間離れ、戻ってきた故郷には、子供のころに当たり前のようにあった、地域の小さな運動会や盆踊り、花火大会やバザー等は無くなっていました。そこで初めて子供のころの当たり前は、当時の大人たちが必死に守っていてくれたものと知ります。
我々の世代は子ども達の世代に何を遺せるのでしょうか。須高地域にUターンしてきてから10年経った今、新型コロナによって、交流も、地域行事も加速的に減っていき、歴史的な建物は解体され、地域の「らしさ」は年々無くなっているように感じます。その中で我々、そして次世代は生き抜いていかなければいけません。
「昔は良かった」と子ども達に言いたくありません。昔の価値観と今の価値観は違います。一辺倒の価値観から脱却し多様性が認められ始めた中、その否定は誰しもできません。世代間が分かり合える世の中を、若者が生きづらさを感じずありのまま暮らしていける社会を次世代に繋げていきたい。
「今はいい時代だ」と子ども達に言いたくありません。厳しい生きにくい時代を我々は歩んでいます。とはいえ明るい未来は常に若者世代が作っていくものです。
時代の変革たる今を生きる我々若者世代は、この日本を作ってくれた先達のこと、親世代のこと、次世代のこと、さらにその向こうまで考えていかねばなりません。

まちとひとがその向こうまで続いていくよう、今年度活動を展開してまいります。


基本方針
持続可能なまちづくり、ひとづくり

重点活動項目
会員同士の共感を育む事業の実施
会員拡大の推進
青少年の未来を明るく照らす指標となる事業の実施
地域を巻き込んだ地域課題解決事業の実施
持続可能なまちづくりのための市民向け事業の開催
持続可能なLOM運営のための定款等諸規定の更新
ファンづくりのための情報発信